しつけの歴史~現在における家庭犬のしつけとは?~

2022/05/16

現在の家庭犬のしつけの方法は、警察犬の訓練が基盤となっています。訓練は服従訓練と呼ばれ、
命令に忠実に従わせ絶対的な主従関係を築くことが特徴です。訓練は、常に緊張感の中で行われ、
指示の出し方も「座れぇ!」「待てぇ!」と厳しく言わなければなりません。また、この訓練で必ず言われることが、


・玄関を出るときは飼い主が先   ・飼い主より先に歩かせない

・食事は飼い主が先で犬は後      ・犬と一緒に寝てはいけない


などですが、これらのことは、家庭犬のしつけとは何も関係がありません


そもそも、この服従訓練の目的とは、使役犬になるためのものです。使役犬とは、警察犬や盲導犬など、
人のために働く犬のことです。使役犬である限り、上司と部下という一線を引いた主従関係が必要になります。
しかし、人のために働くことのない無職の家庭犬との暮らしには、訓練も主従関係も必要ありません。


家庭犬は、毎日遊ぶことが仕事です。家庭犬の一生は、毎日が夏休みなのです。

使役犬として、忠実に従わせるための訓練と家庭犬として、共に暮らすためのしつけは、まったく別なものです。


共に暮らすためのしつけとは、人に飛びつかないとか、台所に入ってはいけないとか、他の犬と上手に挨拶ができるとか、
日常生活でのルールを教えることです。そのルールを教える上で、最も大事なしつけが禁止のしつけです。

禁止のしつけとは、やってはいけないことです。例えば、家で無駄吠えをしたり,散歩中に他の犬に吠えかかったり、
オシッコをどこでも勝手にして周りに迷惑をかけていたら、どんなにお座りや待てなどが上手にできても意味がないと思います。


そして、この禁止のしつけ方が、あるトレーナーは「無視する」、またあるトレーナーは、「叱る」というふうに、
それぞれのトレーナーによって、対処の仕方が違うのが現状です。その禁止のしつけでは、以下のことが良く行われます。


・マズルをつかんで叱る    ・犬を仰向けにして叱る  ・叩く 

・音の出る缶を投げ驚かす   ・リードを強く引っ張り首にショックを与える

など、これらの対処法は、犬を「家畜」として扱うことを前提としたしつけの方法です。

ここで言う家畜とは、犬を人間より下に見て、犬の気持ちや心を尊重しないということです。


よくテレビや映画の中に登場する犬たちは、飼い主にとても忠実で擬人化されて描かれています。
そんなイメージが強いせいか、多くの方が「犬は人間のようにものを考えることができる」と思い、
「ダメ!」「○○しない!」と叱って、犬に反省を求めるしつけを行ってしまいます。

 

しかし、「何が悪かったのか?」の理由づけと、反省ができない犬をいくら叱っても、一時的にやめるだけで善悪の概念がない犬は、

悪い行動をどう改めればよいかはわかりません。したがって、同じことに対していつまでも叱り続ける結果にしかなりません。
 

また、しつけの本やネット、または人から聞いた情報などで、犬をしつけようとしても上手くいきません。
なぜならそれらの情報は、あなたの犬に向けて書かれたものではないからです。


さらに、犬の性格や飼い主の性格、そして、各家庭の犬に与える生活環境もそれぞれ異なるので、
よその家で上手く行った方法が、自分の犬にもうまく行くとは限らないのです。


人と犬は、文化も習慣も、そして、コミュニケーションの手段も違います。
現在における家庭犬のしつけとは、犬をしつけようとする前に、飼い主が正しい知識を学ぶことです。


そうして初めて、しつけに対する適切なアプローチと、問題への的確な対処が出来るようになるのです。
子供のしつけにも犬のしつけにも、近道はありません。そして、犬のしつけは、飼い主次第です!