■問題行動について
「しつけ教室に通ったが、トレーナーの言うことは聞くけど、私のいうことは聞かない」」
「訓練所に預けたけど、帰って来てしばらくしたら元に戻った」などの話をよく耳にします。
私もワンちゃんたちを日中お預かりしてレッスンを行うので、
「犬を預けると先生の言うことは聞いても、飼い主の言うことは聞かないのでは?」という質問をよく受けます。
それに対して私の答えは、「飼い主が何も学んでいないから。」と答えています。
犬に変化を求めるのなら、飼い主も変わらなければならないのです。
この仕事を始めた当時、私が教えていたのは、訓練所で習った「服従訓練」を、そのまま飼い主の方に教えることでした。
服従訓練とは、命令に従わないと叱ったり、リードを強く引っ張り首にショックを与えたり、時には体罰も使って服従する精神を植え付け、
主従関係を強要するというものです。この服従訓練を受けた犬の特徴は、「怖い人の言うことは聞いても、怖くない人の言うことは聞かない」ことです。
私が訓練所にいた頃、犬が私の指示に従わないとすかさず校長から「君が犬になめられているからだよ」とよく言われたものです。
そうして、私が訓練所で教わったことは、「いかに怖い存在になるか」でした。
そして、仕事を始めた当時の私はしつけではなく、人間に対する「服従法」を飼い主の方に教えていたのです。
今、私が行っていることは、犬の「行動」に目を向けた「訓練」ではなく、犬の「心」に目を向けたレッスンです。
その「犬の心」を飼い主の方に理解してもらうことと、犬に「衝動の抑制と感情のコントロール=我慢」のレッスンを行うことが、今の私の一番の仕事です。
とくに、この衝動の抑制と感情のコントロールのレッスンは、1時間や2時間という短い時間で教えられるものではありません。
私は①対処療法は行わないので、犬に我慢を教えるために、日中お預かりをしてレッスンを行うという訳です。
そして、しつけ教室は②基礎を学ぶところです。しつけ教室に通いさえすれば問題が解決するのではなく、
大切なことはしつけ教室を卒業した後の生活なのです。私たちがどんなに犬をトレーニングしても、
飼い主がトレーナーから学んだ基礎を、日常生活という応用の場で実践できなければまた元に戻ってしまいます。
問題行動のレッスンで一番大切なことは、
飼い主の方の「どれだけ時間がかかっても絶対に治したい」という気持ちにかかっているのです。
① 対処療法 = 罰を与えるだけで、一時的な対処でしか問題を根本から解決しようとしないこと。
② 基 礎 = この基礎に対する考え方が、訓練士やトレーナーによって大きく異なるのが実情。