知らないことは、叱られても困るだけ~犬から信頼を得る飼い主になるには~

2022/02/21

犬を、本で読んだ知識、テレビや人から聞いた情報で動かそうとしても、決してあなたの望み通りには動いてくれません。
なぜならそれらの情報は、あなたのわんチャン専用に向けられたものではないからです。

                                                                                 
犬のしつけは、犬によります。また、飼い主の性格と犬の性格など内的要素に加え、
各家庭の生活環境などの外的要素も大きく影響するので、「こっちが正しくて、あっちは間違っている」とか、
「この方法が絶対にいい!」という、普遍的かつ絶対的な方法は存在しません。

しかし、それぞれの飼い主と犬に合った方法は必ず存在します。         

大切なことは、あなたの気持ちが動きとなり、表情に表れ、そして声になり、観察する目を持ち、犬の気持ちを聞く心を持って、
初めて通じ合えるのです。犬と暮らす初めての人は、これらのことがわかるまで何年もかかるでしょう。
初めてではない人でも、一生わからないままの人もいます。                          

犬のしつけがうまくいかないとすれば、そして一番単純な重大なミスは、私達に一貫性がないことだと思います。
犬は、もともとヒトの言葉なんてわかりません。それを懸命に理解しようとしてくれているのです。

それなのに、「スワレ」と言いながら座らせなかったり、「マテ」と言いながら結局、きちんと待たせていなかったり、
できないことを要求していることが多いのです。私達にとっては、それは当たり前にして欲しい行為だったりすることが、
犬にとっては、当たり前でないことを忘れてしまうのです。                            

そして、多くの飼い主が「引っ張らない!」「そっち行っちゃ駄目!」「ワン言わない!」などと、
間違いを叱るだけで正しい行動を教えることをせず、「○○しない!」と、否定して教えようとします。
しかし、善悪の概念と反省と後悔ができない犬に、言い聞かせたり、叱って何かを教えようとしても無理な話です。                           

また、一度指示したことを、犬がやらなかった時にそのまま放っておいたり、まだ確実にできないことを指示して
やっぱりできないと、諦めてしまうことがよくあります。犬にしてみれば、余計に言葉を分かりづらいものにしてしまうことでしかありません。                                                                         

さらに、指示したことをやらなくてはいけない時と、やらなくてもよい時があるということは、
犬にしてみればどちらでも良いということです。それなのに、肝心な時に座らないと声を荒げてしまうのです。
犬にとってこんな理不尽なことはありません。                                                                      

「まって!待って!!」と言いながら、犬に引っ張られてついて行く飼い主。
「ゆっくり!ゆっくり!!」と言いながら、速足で犬についていく飼い主・・・。                 

犬の世界に曖昧はありません。犬にとって、人が何を言いたかったのか、何をさせたかったのか、
飼い主が曖昧にしてしまうのです。それなのに、「言ってもできない。」と思うのです。                                                                       

「言ってもできない。」は、正しい日本語ではないと思います。「やる時とやらない時がある。」は、結局やらないということです。
正しくは、「出来るまで教えなかった。」が本当だと思います。馬鹿な犬などこの世にはいません。                                                            

一貫性のない曖昧な人間を信頼しないのは、私達も犬も一緒です。いつも自分の行動と言葉に、
責任をもって対処できる飼い主は、犬に色々なことを理解させるだけではなく、信頼を得る飼い主になれるのです。  

獣医師~西山ゆう子先生のブログから~